こもれび
新生児の親向け健康・病気保存版

母乳バンクの基礎知識と
利用ガイド

早産や低出生体重で生まれた赤ちゃんにとって、母乳は命を守る大切な栄養です。 お母さんの母乳が出ない・足りないとき、「母乳バンク」という選択肢があることを知ってください。

母乳バンクとは

母乳バンクは、母乳が余っているドナー(寄付者)から提供された母乳を、低温殺菌処理・細菌検査・冷凍保管し、 NICUの赤ちゃんに「ドナーミルク」として届ける仕組みです。 日本では2017年に本格始動し、現在は全国に広がっています。

数字で見る日本の母乳バンク

1,214人

2024年度にドナーミルクを利用した赤ちゃん

114施設

全国42都道府県のNICUで利用可能

748人

2024年度のドナー登録完了数

出典: 日本財団母乳バンク・日本母乳バンク協会 2024年度実績報告

ドナーミルクができるまで

1

ドナー登録

母乳が十分に出ているお母さんが登録施設で血液検査・問診を受け、ドナーとして登録

2

搾乳・冷凍

自宅で搾乳し、冷凍した母乳を登録施設に持ち込み

3

殺菌処理

母乳バンクで62.5°C・30分間の低温殺菌処理(ホルダー殺菌法・国際標準)

4

細菌検査

殺菌後に細菌検査を実施。菌が検出されないことを確認してから冷凍保管

5

NICUへ提供

NICUからの要請に応じて配送。医師の判断のもと、赤ちゃんに提供

利用の対象となる赤ちゃん

  • 極低出生体重児(出生体重1,500g未満)
  • 消化管の手術を受けた赤ちゃん
  • 先天性心疾患のある赤ちゃん
  • 消化管アレルギーのある赤ちゃん
  • お母さんの母乳が出ない・足りない場合

※利用はNICUの主治医が必要性を判断し、母乳バンクに発注する形で行われます。 親が直接申し込むのではなく、医療機関を通じて提供されます。

ドナーミルクのメリット(人工乳との比較)

1

壊死性腸炎(NEC)リスクの低減

最重要

人工乳と比較して、ドナーミルクは壊死性腸炎のリスクを約1/1.87に低減

2

感染症リスクの低下

重要

母乳に含まれる免疫成分が重症感染症のリスクを下げる

3

経腸栄養の早期確立

重要

消化管の成熟を促し、点滴からの離脱を早める

4

未熟児網膜症・慢性肺疾患の軽減

重要

母乳栄養により、これらの合併症リスクが低下する研究結果

安全性への取り組み

1

ドナースクリーニング

厳格

血液検査(HIV・肝炎ウイルス等)、問診、生活習慣の確認を実施

2

低温殺菌処理

国際基準

62.5°C・30分間のホルダー殺菌法(国際標準の殺菌方法)

3

細菌検査

必須

殺菌後に菌が検出されないことが使用の絶対条件

4

有効期限管理

厳格

殺菌後3ヶ月以内。期限を過ぎたものは廃棄

費用について

親の自己負担は基本的にありません。ドナーミルクの費用はNICUのある病院が母乳バンクに会費として支払う形式です。 NICUの入院費自体は乳幼児医療費助成制度の対象となります。

2025年度からは東京都が全国初の「ドナーミルク利用支援事業」を開始し、 病院の費用負担を軽減する補助制度を設けています。 今後、他の自治体への波及も期待されています。

日本の母乳バンク拠点

一般財団法人 日本財団母乳バンク
  • ・日本橋母乳バンク(東京都中央区)
  • ・藤田医科大学病院 日本財団母乳バンク(愛知県)
一般社団法人 日本母乳バンク協会
  • ・東京(豊洲ほか)を拠点に運営

※ドナーミルクの利用は拠点ではなく、登録されたNICU(全国114施設以上)で行われます。 お子さんが入院しているNICUが登録施設かどうかは、主治医にお尋ねください。

利用したいとき

  1. 1.NICUの主治医・看護師に相談する(親が直接母乳バンクに申し込む必要はありません)
  2. 2.医師がドナーミルクの必要性を判断し、母乳バンクに発注
  3. 3.殺菌・検査済みのドナーミルクがNICUに届けられ、赤ちゃんに提供
  4. 4.費用は病院が負担するため、親の自己負担は基本的になし

ドナーになりたい方へ

ドナーの条件
  • 自分の赤ちゃんに必要な量以上に母乳が出ている
  • 喫煙していない、アルコール・薬物の常用がない
  • 血液検査でHIV・肝炎等の感染症が陰性
  • ドナー登録施設に冷凍母乳を持ち込める
登録の流れ
  1. 1.母乳バンクのサイトで最寄りのドナー登録施設を確認
  2. 2.登録施設で血液検査・問診を受ける
  3. 3.合格後、自宅で搾乳・冷凍して施設に持ち込み

出典・参考文献

  • [1] 一般財団法人 日本財団母乳バンク. 2024年度活動データ報告. milkbank.or.jp
  • [2] 一般社団法人 日本母乳バンク協会. ドナーミルクのご案内. jhmba.or.jp
  • [3] 東京都保健医療局. ドナーミルク利用支援事業. 2025年度開始.
  • [4] こども家庭庁. 諸外国における母乳バンクの実態調査. 2025年3月.
  • [5] 日本小児医療保健協議会. 早産児の経腸栄養に関する提言. 2019年.
  • [6] 藤田医科大学病院. 国内3か所目の母乳バンク開設. 2025年.

免責事項: 本ページは一般的な情報提供を目的としており、医療アドバイスに代わるものではありません。 ドナーミルクの利用については、必ずお子さんの主治医・NICUスタッフにご相談ください。 施設の登録状況や制度の詳細は変更される場合があります。